TILLING(Targeting Induced Local Lesion in Genome)システムは突然変異集団から点突然変異(ヌクレオチドの変異)を大規模にスクリーニングする極めて効率的な方法である。配偶子(Gc:gametocidal)致死遺伝子はパンコムギに染色体構造変異を誘発するが、点突然変異も誘発するかは明らかでない。そこで、Gc遺伝子を利用してパンコムギのTILLINGシステムを確立できるかを明らかにするため、実験標準品種Chinese SpringにAegilops cylindrica由来のGc遺伝子の座乗している2C染色体が1本添加した系統(21"+1')を自家受粉して、突然変異の起こっていると期待されるF1集団を得た。2C染色体が有ると芒が生じるので、研究計画にあった2C染色体の無い個体を細胞遺伝学的に選抜することはせずに、1139個体を育成した。その内、芒が無かった692個体からDNAを抽出した。また、研究計画には乗せなかったが、オオムギ3H染色体が一対、2C染色体が1本添加した系統(22"+1')にChinese Springを戻し交雑したBc1集団を706を育成し、平成20年4月にDNAを抽出する予定である。この集団では、コムギだけでなくオオムギの3H染色体に座乗するDNA配列のTILLINGも可能にすることが期待できる。TILLINGのPCR条件の設定は予定より遅れているが、必要な試薬を購入しているので、平成20年度の早急に実際のTILLINGを合計1398個体を用いて開始する予定である。
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