研究概要 |
現在,園芸作物残渣は,約20%しか利用されていないが,その主たる理由は,1)作物によって窒素成分が異なり製品が均一化できない,2)根や茎はセルロースやリグニン等の難分解性有機物であるため,分解が困難であり時間がかかる,3)すき込んでも堆肥化しても病害が発生する恐れがある,による.本研究では,残渣に酸化カルシウム等のアルカリを加え,発熱分解処理によりタンパク質の分解に伴う窒素をアンモニアとして回収し,同時に病原菌を死滅させることを目的として,1)微生物による一次有機物の分解と2)アルカリ加水分解を併用することにより,従来の堆肥化に比べてはるかに短時間で園芸作物残渣を分解処理し,併せて作物残渣から窒素を除去する技術を開発することを目的として,以下の実験を行った. 1.難分解性有機物を含む園芸作物残渣のアルカリ加水分解処理技術の開発 過去に行った実験結果を基に,園芸作物残渣のアルカリ加水分解処理技術を開発した.その結果,外部からの熱エネルギーとアルカリ加水分解速度との間に相関が認められた. 2.微生物を用いた難分解性有機物の分解 化学処理によるセルロースやリグニンといった難分解性有機物の分解には多大なエネルギーが必要であり,アルカリ加水分解による発熱反応だけでは十分に分解できないことが明らかとなった.そこで,難分解性有機物をできる限り早く分解する手段として,微生物による一次分解とアルカリ加水分解を併用した所,窒素の除去スピードを大幅に増加させることができた.しかし,微生物による一次分解には,分解糟の温度条件が大きく関与していたことから,今後は,最も能力の高い,微生物による一次分解糟の開発を行う必要が認められた.
|