『防根給水ひも』栽培手法の確立に向けて栽培試験に取り組んだ。栽培容器を1stBox (3リットル)、2ndBox (3リットル)に仕切り、生育途中での根域開放効果について試験した。大玉トマトの秋〜冬季の8段穫り栽培では、開放による6リ ットル培地で収量は若干、高まるものの有意差はなく1stBoxの培地量で問題ないことを明らかにした。また、水要求量が増す春〜夏季の雨よけハウス栽培において、(1)定植始めから栽培終了まで1stBox、「ひも」1本で給水するS(1)区、(2)4段花房ホルモン処理時に2ndBoxに培土を加え、1stBoxの「ひも」1本で給水をするS(1)+S(0)区、(3)S(1)+S(0)区と同様に培土を追加し、給水は両Boxの「ひも」2本で給水するS(1)+S(1)区を設けて試験したところ、根域開放(6リットル培地)により株当たりの収量は約1kg増加した。「ひも」適用の効果についてはS(1)+S(0)区に比べS(1)+S(1)区は株当たりの収量が増加したが、その差は0.4kg程度であった。根の乾物重は処理区間に有意差はなかったが、2ndBoxにおいては、「ひも」を配置したS(1)+S(1)区はS(1)+S(0)区よりも著しく増加した。以上の結果から、植物の水分要求量が増す春〜夏季にかけての栽培では1stBoxのみの栽培では収量が低下するため、保水のため培土を増やす必要があると考えられた。「ひも」適用の有無については生育、収量に大きな差はないため培地量6lに対し「ひも」1本でも植物の水分要求量は満たされていると考えられた。 他方、養分はあらかじめ緩効性肥料で培地に混和しておき、「ひも」では水のみを送り込む方法が考えられる。11月15日(第8段花房開花時)に仕切りを外し土量を2倍にした。中玉トマト第18段果房上2葉を残して摘心した。摘心部茎葉重はひも2本区で1本区の2倍、株当たりの収量も約1kg高かった。果実糖度と酸度にはひも1、2本区間に大きな差はなかった。根乾物重とSap量にひも1、2本区で差は認められなかった。Sap分析はNO3-N濃度(6〜10me/l)とMg濃度(2〜3me/l)が低く、Ca濃度(80〜100me/l)が異常に高いことを示した。以上の結果より、中玉トマトの長期促成栽培においては、仕切り開放に伴う「ひも」の適用は、生育の安定と収量の増大に有効であることが明らかとなったが、収穫終了時のSap分析においてNO3-N濃度が低すぎることから、窒素肥料のタイプと施与量の検討が必要があると考えられた。
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