研究概要 |
ニガウリはクライマクテリク型の果実に属し、収穫後の急激な生理的変化を引き起こし品質の低下を招いている。本研究ではニガウリの成熟過程における生理的変化を、^1H-NMRによる解析を主とする水分生理学的な解析、老化のカギとなるエチレン、活性酸素種やそれを消去する抗酸化物質等に着目し解析を行った。ニガウリ果実では、含水率が開花20日目まで漸増し、その後わずかに減少した。水の動態を示すNMR緩和時間T_1およびT_2は開花20日目まで漸増したが、前者ではやや減少し後者はほぼ同じ値を維持した。以上のことから、果実の伸長・肥大が進行するにつれて細胞中に自由水が増加し、その後はやや減少することが明らかになった。含水率との相関はT_2のほうが高く、ニガウリ果実の成熟度の指標になることが示された。ニガウリ果実の成熟初期においては、抗酸化酵素であるカタラーゼ(CAT)により過酸化水素含量が抑えられていた。一方、成熟後期においては抗酸化酵素のアスコルビン酸ペルオキダーゼ(APX)やCAT活性が上昇とともに、黄化果実ではエチレン濃度の上昇や過酸化水素の著しい増大により細胞死が捉進されたと考えられる。また、果皮では成熟後期に膜脂質の崩壊に応答し、膜を修復する機能が働いていることが示唆された。さらに、ニガウリ植物体の基礎データを得るため,ストレス応答性プロティンキナーゼ(SNF1)関連キナーゼに着目し、カルシニューリンB様分子結合キナーゼ様分子およびストレス応答性SNF1キナーゼ、SnRK2様分子の発現について明らかにした。
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