研究概要 |
インスリンは,「血糖調節、代謝調節」に係わるホルモン作用に加え,線虫や昆虫での研究により,個体の生き残り戦略の要となる分子であることが示されつつある。本年度は,ボンビキシン及びプロボンビキ-シンCペプチド(Cペプチド)による細胞内情報伝達に注目し,マルピーギ管でのシグナル伝達系の主要経路であるMAPキナーゼ(ERK)が活性化するか否かを,抗リン酸化型ERK抗体によるウエスタンブロット解析により明らかにした。 ERKの活性化に対するボンビキシンの影響を経時的に検討したところ,2nMの比較的高濃度で5分間の刺激により,ERKの活性化がみられ,15分まで維持された。この結果から,ボンビキシンシグナルは5分以内にERKの活性化を引き起こすことが示された。また,ボンビキシンがインスリン様シグナルかリラキシン様シグナルのどちらの系を介して作用するか明らかにするため,シグナル伝達機構に注目し解析を行った。阻害剤を用いた実験から,ERKの上流のキナーゼであるMEKの阻害剤U0126,そしてインスリン受容体の阻害剤AG1024により,ボンビキシンによるERKの活性化が阻害された。一方,Gタンパクαサブユニットの阻害剤,PI3Kの阻害剤では、ERKの活性化が阻害されなかった。このことから,ボンビキシンのシグナル伝達系はインスリンシグナル伝達系と類似していることが示唆された。 Cペプチドについても同様の系でERKが活性化するか否か調べたが,現在まで活性化するという結果は得られていない。
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