平成19年度の本研究では、OsATA1 ; 2が、グルタミンの輸送機能を有し、また、アンモニウム供給後のイネの根の厚膜組織や維管束柔細胞に分布することが示唆された。今年度の研究では、特にOsATA1 ; 2について重点的に研究を進めた。 緑色蛍光タンパク質(GFP)とOsATA1 ; 2の融合タンパク質(GFP-OsATA1 ; 2)をタマネギ表皮細胞で一過的に発現させ、共焦点レーザー顕微鏡観察した結果、GFP-OsATA1 ; 2は、液胞膜と推定される細胞内への陥入構造を有する膜様の構造体に局在することが判明した。液胞膜に局在するスネアータンパク質であるシロイヌナズナVAM3(AtVAM3)とGFPの融合タンパク質(GFP-AtVAM3)および赤色蛍光タンパク質(mRFP)とOsATA1 ; 2の融合タンパク質(mRFP-OsATA1 ; 2)を同様にタマネギ表皮細胞またはイネ根細胞で一過的に共発現させた結果、両融合タンパク質は膜様の構造体に共局在したため、OsATA1 ; 2が液胞膜に局在することが示された。 アンモニウムイオンからグルタミンを合成するグルタミン合成酵素の酵素活性阻害剤であるメチオニンスルフォキシミン(MSX)処理下で、アンモニウムまたはグルタミンを供与したイネ根でのトランスクリプトーム解析と定量的RT-PCR解析により、OsATA1 ; 2遺伝子は、アンモニウムだけでなくグルタミンもしくはグルタミンの代謝産物に応答して発現量が著しく増加するアミノ酸トランスポーター遺伝子の一つであることが判明した。 以上、本研究から、OsATA1 ; 2は、特にアンモニウム供与下のイネ根の厚膜組織細胞の液胞における同化グルタミンの膜輸送系に関わることが示唆された。
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