研究課題
各種腸内細菌と宿主との相互作用に関しては多くの研究がなされ、個々の細菌が宿主に与える影響については詳細な解析が現在進められている。しかし、実際の腸内フローラにおいては細菌は複合生物の群衆として活動しており、細菌の集団的活動を理解することがさらなる腸内細菌研究では必須である。本研究では、このような細菌間相互作用の総合的に理解のための研究の基盤的プラットフォームを構築することを目標としている。19年度は、腸内フローラの群集構造を正確に把握するための手法として、次世代型高速DNAシーケンサーを用いた高精度な菌叢解析法を確立した。20年度は、この次世代型高速DNAシーケンサーを用いて得られた菌叢データを利用して、(1)プロバイオティクス(Bifidobacterium breve M-16V)の乳児期の投与が腸内フローラ形成に与える影響、(2)乳児期の腸内フローラとアレルギー発症の関連性、(3)腸内細菌叢スナップショットデータからの細菌間相互作用の抽出、以上の解析を行った。(1)においては、プロバイオティクスを摂取していた生後3カ月間より、摂取を止めた後の菌叢変化に影響が現れることを見出した。プロバイオティクス摂取群では離乳後のビフィズス菌の低下がプラセボ群に比べて遅く、それと共に、クロストリジア綱の増殖が抑制されていた。(2)においては、生後2年以内に食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギーを発症する子供においては、生後1カ月時の糞便にバクテロイデス科細菌が健常者に比較して有意に多く検出されることが示された。(3)においては、ビフィズス属細菌とクロストリジア綱細菌およびビフィズス属細菌とバクテロイデス属細菌が腸内において拮抗的な関係にあることを示唆するデータを得ている。現在さらに、乳幼児期の糞便細菌叢の多数のスナップショットデータを詳細に解析し、さまざまな細菌間の相互作用を見出すことを試みている。
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