肺炎クラミジアは、市中肺炎の主要な原因菌であり、また、動脈硬化や喘息など多彩な病態への関与が示唆されている。肺炎クラミジア全ゲノム配列決定により、ゲノム中にはIII型分泌装置という病原因子であるエフェクターを宿主細胞内に注入するためのタンパク質構造体遺伝子が存在することが明らかになり、本菌が他の病原菌同様に感染時に宿主細胞内ヘエフェクター分子を注入していることが予測された。本研究では、酵母発現系を用い、ゲノム情報をもとに肺炎クラミジアエフェクター分子を網羅的にスクリーニングするシステムを開発し、得られたエフェクター分子の機能解析から本菌の感染戦略を理解することを目的とした。 本年度は、以下の項目について行った。 1)肺炎クラミジア整列遺伝子ライブラリーの構築:肺炎クラミジア機能未知遺伝子538個を酵母発現ベクターに組込み肺炎クラミジア整列遺伝子ライブラリーの作製を完了した。 2)酵母発現系による肺炎クラミジアエフェクター候補遺伝子のスクリーニング:上記において作製した整列遺伝子ライブラリーを網羅的に酵母に形質転換し、酵母の増殖抑制および液胞タンパク質マーカーの分泌を指標として、これまでに242遺伝子についてスクリーニングを行い、現在までに約15遺伝子について酵母増殖抑制を確認し、これらを肺炎クラミジアエフェクター候補遺伝子とした。 3)エフェクター候補タンパク質の大腸菌での発現:上記スクリーニングにより得られたエフェクター候補タンパク質とGSTまたはMBPと融合タンパク質を大腸菌で発現させ、抗体作製のための抗原の調製を行った。
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