研究概要 |
本研究では、酵母発現系を用いたChlamydophila pneumoniae(C.pneumoniae)エフェクターの網羅的スクリーニングシステムの開発を目的に研究を行った。Tet-offプロモーターにより発現の調節が可能である酵母発現ベクターに組込んだアレイライブラリーを作製し、酵母の増殖抑制を指標にC.pneumoniae J138株機能未知遺伝子456個について、エフェクター分子の探索を試みた。このシステムにおいてエフェクターとして既に報告されているサルモネラエフェクター分子SopE2、エルシニアエフェクター分子YopEが酵母に対して増殖抑制を示し、このシステムが病原菌の種を超えたエフェクター分子の網羅的スクリーニングシステムとして機能することを確認している。そこで、C.pneumoniae機能未知遺伝子について解析を行ったところ、62個の増殖抑制を示すエフェクター候補分子を見いだすことに成功した(Biosci Biotechnol Biochem. 73 : 2261-2267, 2009)。またカルボキシペプチダーゼY-インベルターゼ融合蛋白質を用いた小胞輸送系の異常を検出するスクリーニングシステムも開発しており、現在このシステムを用いて小胞輸送に影響するエフェクター分子の同定を行っている。これらのスクリーニングシステムは分子遺伝学的手法が乏しく現在まで病原因子の特定がほとんどなされていないC.pneumoniaeの感染戦略を明らかにするうえで、その突破口なることが期待される。本研究により開発したシステムは多数の病原菌において活用できる汎用性を備えたシステムであり、今後さらに様々な病原菌へ適用することで、その感染戦略を明らかし、エフェクター分子を標的とした新たな分子標的薬剤の開発に繋がることが見込まれる。
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