研究代表者は、S. ruminantiumにおける「原核生物では存在しない」とされていたアンチザイムを介した真核生物型蛋白分解制御機構を発見してきた。昨年度はP22は本菌のリボソーム構成タンパク質L-10であることを証明し、リボソーム蛋白質が蛋白質の分解に積極的に関わっている報告はなく、細菌における新規の蛋白質分解制御機構の発見である。本年度は以下の事項を明らかにした。 (1)P22のLDC/ODCへの結合部位を決定した。既に研究代表者らにより、LDC/ODCのP22結合部位が決定され、さらに結合常数が8×10^<-11>と決定された。P22は大腸菌を含む一般の真正細菌のリボソーム構成蛋白質RPLJ (RplJ)とアミノ酸配列で80%以上の相同性を有しているが、大腸菌のRplJにはLDC/ODC分解促進活性が見られなかった。従って、研究代表者はP22にのみ存在し、他の細菌のRPLJでは欠損している二つの領域、A領域(K^<101>NKLD^<105>)およびB領域(G^<160>VIRNAVYVLD^<170>)に着目し、S. ruinantiumにおけるAまたはB領域を欠損した変異P22について、S. ruminautiumLDC/ODC対する結合活性および分解促進活性を調べ、両領域がP22の機能に必須であるかを明らかにした。 (2)大腸菌リボソーム蛋白質RplJに欠損している上記AおよびB領域にS. ruminantium由来のAおよびBペプチド断片を挿入してRplJ変異蛋白質を作製した。そして本変異蛋白質がLDC/ODCに対して結合活性および分解促進活性を持つか否かを検討した結果、両領域がP22の機能に必須であるかを明らかにした。
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