シロイヌナズナのbZIP型転写因子をコードする遺伝子AtbZIP11においてショ糖特異的翻訳抑制系(Sucrose-induced repression of translation;SIRT)が見出された。ショ糖特異的翻訳抑制系に関与することが示唆されているシロイヌナズナのAtbZIP53遺伝子とタバコのtbz17遺伝子を、5'-非翻訳領域(5'-UTR)に存在する上流オープン・リーヂング・フレーム部分(uORF)を含まない形、すなわちショ糖による翻訳抑制を受けない形でシロイヌナズナとタバコにそれぞれ導入したところ、得られた形質転換植物はいずれも強い乾燥耐性の形質を示した。 本申請では、ショ糖特異的翻訳抑制系を利用した形質転換植物の乾燥耐性の分子基盤を明らかにすることを目指した。AtbZIP53遺伝子プロモーターにレポーター遺伝子を連結したコンストラクトを導入した形質転換シロイヌナズナでショ糖による翻訳抑制を示すことが出来た。またタバコtbz17の5'-UTRには3つのuORFがあるが、このうち他の植物種からの相同遺伝子にも保存されている二番目のuORFの開始コドンをロイシンコドンに改変したもの、またこのuORF領域を欠失した場合には主ORFの翻訳産物を高レベルで検出できるが、一方野生型の5'-UTRをもつ場合には主ORFの翻訳産物をほとんど検出できないことを明らかにした。 以上の結果から、AtbZIP53とtbz17の保存されたuORFが、主ORFの翻訳制御に重要な役割をもつことを明らかにした。
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