シロイヌナズナのAtbZIP11遺伝子はbZTP型転写因子をコードする。本遺伝子の転写物の5'非翻訳領域は長く、ここに4つの短いupstream open-reading frame (uORF)が存在する。AtbZIP11タンパク質への翻訳は外部からショ糖を添加すると強く抑制されること、この際2つ目のuORFが必要であること、が報告されている。我々は、系統学的にAtbZIP11遺伝子に近縁なタバコのtbz17遺伝子でショ糖による翻訳抑制が起こること、tbz17遺伝子の5'非翻訳領域の3つのuORFのうちの2番目のuORFがこの制御に関与することを明らかにした。従って、ショ糖によるある一群のbZIP遺伝子の翻訳抑制は普遍的な現象である可能性を示唆した。またこの現象は、光照射4時間後では観察されないことから植物内ショ糖濃度による制御であることが示唆された。ウイルスを介した一過的な遺伝子不活性化法を用いてtbz17の発現を抑制したタバコでは、不活化が起こっている葉の生育が著しく遅れる現象を見出している。現在、ショ糖代謝系の発現解析を行っている。タバコtbz17遺伝子がショ糖により翻訳抑制を受けなくした形で過剰発現すると、細胞内ショ糖濃度が高まることを明らかにしており、TBZ17の標的遺伝子の同定を通してメカニズムを明らかにしたい。
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