プロテアソームは生体内の多くの機構制御に重要な役割を果たしているタンパク質分解酵素であり、分解される基質タンパク質には分解シグナルとしてユビキチン(Ub)鎖が付加される。現在Ub・プロテアソームの研究のために市販のプロテアソーム阻害剤が利用されているが、市販の阻害剤はその吸収率の問題から植物では培養細胞やリーフディスクなどでしか使用できず、植物個体で効果的に作用する阻害剤(法)の開発が必須である。そこで本研究では、植物個体で効果的に作用する新しいプロテアソーム阻害法の開発及びそれを用いた応用研究を目指している。平成20年度は新しい阻害法の開発のために平成19年度に作出した形質転換植物(Ub hydrolase-insentive Ub鎖を発現させるDEX誘導型シロイヌナズナ)を大量に育成して種子を集めた。この形質転換植物を用いて、プロテアソームの阻害効率を評価したところ、2つUbがつながったUb鎖では阻害効果がなく、4つUb鎖がつながったUb鎖ではプロテアソーム活性を十分に阻害することが明らかとなった。また、6つUbがつながったUb鎖では阻害効率が高すぎてDEX誘導前でも形質転換植物の生育が著しく抑制されることが明らかになった。新しい阻害法の応用として花芽からのUb化タンパク質の精製・同定のために、平成20年度は予備実験として野生型植物の花芽を用いてUb化タンパク質の精製を行い、同定に十分量の精製サンプルを得るために必要な材料の量を見積もった。また、形質転換植物の花芽を大量に採取して、形質転換植物の花芽からのUb化タンパク質の精製を行った。再現性を得るために現在反復実験を行っている。
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