研究概要 |
植物の改良には,遺伝子操作(遺伝子組換え技術)が最も有効であるが,既存の植物遺伝子操作技術は,以下の2点の条件を満たしていない.(1)外来遺伝子が花粉を介して飛散しない.(2)抗生物質耐性遺伝子等に代わり食べて安全な遺伝子導入(形質転換)マーカーを使用する.この2点を満足する技術の樹立を本課題研究の目的とする.植物細胞における葉緑体は,光合成を行なう重要なオルガネラであるが,ここには独自のゲノムがあり,多くの植物においてこれは花粉には移行しない(母性遺伝).したがって,(1)の目的に対しては,葉緑体形質転換系を確立する.(2)の研究目的に対しては,本来食に供しない微生物由来の抗生物質耐性遺伝子等は使用せず.高等植物由来の遺伝子を開発する. 分岐鎖アミノ酸の生合成に介在するアセト乳酸合成酵素[acetolactate synthase(ALS);別称acetohydroxyacid synthase(AHAS)]は,除草剤の標的となる.ALSはアミノ酸置換の導入により,異なるALS阻害除草剤に対して耐性となる.そのため圃場において異なる除草剤のローテーション使用が可能になり,除草剤耐性雑草の出現の回避に繋がる.パーティクルガン法による葉緑体形質転換により,異なるALS阻害除草剤に耐性を示す4種類の変異型ALSのタバコへの導入・発現に成功した.さらに,抗生物質耐性遺伝子を介さず,変異型ALSを選抜マーカーとして葉緑体形質転換を可能にするための培地やALS阻害除草剤による選抜時期などの選抜条件の検討を行った.
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