アルツハイマー病を治療する経口ワクチンを開発するため、アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法により、原因タンパク質とされるアミロイドベータペプチドを含有した植物細胞培養系を作出した。材料として、ダイズ、イネ、薬草のコヘンルーダを用いた。アミロイドベータペプチド遺伝子は、プロモーターとして組織非特異的に発現する35Sを用い、緑色蛍光タンパク質遺伝子との融合タンパク質遺伝子として発現させた。遺伝子の導入の確認は、PCR法及びサザンブロット法で行った。また、ペプチドの蓄積についてはウエスタンブロット法で確認した。その結果、イネカルス(脱分化細胞)とコヘンルーダ苗条原基(茎頂分裂細胞の集合体)において、高い濃度でアミロイドベータペプチドの蓄積が認められた。これらの培養細胞については、培地中に抗生物質を添加することにより、高発現の細胞を選抜維持している。イネ培養細胞については、マウスへの投与試験を開始した。ダイズ培養細胞については、蓄積量が不安定であった。 本研究は、培養細胞により生産された抗原(アミロイドベータペプチド)を、経口投与することにより体内に抗体を作らせ、脳内のアミロイドベータペプチドを除去することを狙ったものである。培養植物細胞においてアミロイドベータペプチドの蓄積が確認されたことから、微生物の発酵タンク等でのワクチン生産法と同様に、厳重に管理された条件化でのアルツハイマー病経口ワクチン生産の可能性が示された。
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