注射ワクチンより安全・安心で安価な抗アルツハイマー病経口ワクチンを開発するため、アミロイドベータペプチドを含有したダイズ、イネ及びコヘンルーダの遺伝子改変植物細胞培養系を作出し、マウスへ経口投与し、免疫反応の上昇等を指標とするワクチンの効果及び安全性を評価した。 マウス血清中のアミロイドベータペプチドに対する抗体価は、毎週の4回の短期経口投与により、いずれの培養細胞とも上昇したが、特にダイズ細胞が効果的であった。経口投与では、免疫グロブリンの内、非炎症性のIgG1とIgG2b抗体価が上昇し、炎症性のIgG2a抗体価の上昇は認められなかった。注射投与の場合、炎症性のIgG2a抗体価の上昇が見られ、副作用が起こる危険性が高いことがわかった。イネ培養細胞を老化促進マウスに半年以上、長期経口投与した場合、脳内のアミロイドベータペプチド沈着の減少傾向が認められた。また、投与による脳炎等の副作用は見られなかった。 遺伝子改変植物の日本での栽培は、消費者の持つ不安等のため事実上できない。植物培養細胞を抗アルツハイマー病ワクチンとして用いる方法は、医薬品として重要な条件、GMP準拠でのワクチンの生産が可能である特色を持ち、消費者に受け入れられやすい。本年度の結果、アミロイドベータペプチドを含有した遺伝子改変植物細胞がマウス血清中のアミロイドベータに対する抗体価を上昇させ、また注射ワクチンの様な副作用が起こらなかったことから、培養植物細胞を用いる方法での抗アルツハイマー病経口ワクチンの実用化の可能性が高いことが示された。
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