研究概要 |
アミノ酸が単独で脂質代謝を変動させ、生活習慣病予防に寄与するかについて、分子細胞生物学的評価を行い、グルタミンに特異的な効果を認めた。この知見に基づき、グルタミンの作用機序を分子レベルで解析した。 ヒト肝癌細胞HepG2をグルタミンを通常培地の10倍量含む培地で培養すると、脂質代謝に関与する遺伝子の発現上昇が認められた。この効果は転写因子SREBPの発現上昇、活性化亢進に起因していた。グルタミン添加1時間以内に、SREBPのタンパク質プロセシングによる活性化の亢進が認められた。この効果は、SREBP-1,-2のいずれでも認められ、その後に、SREBP応答遺伝子群の発現上昇が確認された。グルタミンはヘキソサミン合成経路を活性化し、種々の蛋白質のO-グリコシレーションを促進する。実際、この作用により転写因子Sp1の転写活性が上昇し、応答遺伝子であるSREBP-1aの遺伝子発現亢進が認められた。この亢進は、ヘキソサミン合成経路阻害剤によりキャンセルされ、グルタミンの効果の一部はこの合成経路の活性化に起因することが明らかになった。 SREBPのプロセシングは小胞体からゴルジヘの輸送に伴い進行することから、グルタミンの効果を検討した。その結果、グルタミンはSREBP前駆体の小胞体からゴルジヘの輸送を亢進させ、その結果として活性型へのプロセシングを促進していた。さらに、グルタミンを4%含む飼料でマウスを飼育し、小腸におけるSREBPプロセシングを評価した。その結果、小腸においてグルタミンはSREBPの活性化を促した。
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