食品成分が、腸管感染症における病原体の腸管細胞への結合や侵入に対する阻害機能の示す可能性について評価するために、ノロウイルス感染のin vitroモデル系としてウイルス様粒子(VLPs)を用いる実験系を確立した。VLPsを培養腸上皮細胞の培地中に添加し、細胞表面に結合したVLPsを細胞溶解液の免疫ブロット法と固定した細胞の蛍光抗体染色法により解析した。VLPsは培養ヒト腸上皮細胞表面に反応時間依存的に結合し、株化した腸上皮細胞の一部の細胞のみに結合することが明らかとなった。そこで培養ヒト腸上皮細胞とノロウイルスVLPsとの結合を免疫ブロット法により詳しく解析した。多孔性膜上で培養したヒト腸上皮様細胞株の頂端側表面に結合したVLPsを細胞溶解液として回収し、抗-VP1抗体を用いた免疫ブロット解析した。分子量約6万のVP1のバンドが反応時間5分で既に検出され、徐々に増加し、60分後でほぼ一定となった。反応時間とともにバンドの濃度が上昇したことから、添加したVLPsが細胞に結合したと判断した。また、分子量約3万および3.5万のバンドも、やや遅れて反応時間10分後から検出され、60〜120分でほぼ一定となった。この低分子量のバンドについては、調製したVLPs標品にも一部分解断片が含まれるが、相対的に微量であることと、分子量6万のVP1が検出されるタイミングよりもやや遅れて検出されることから、細胞と反応させている間に生じた断片と考えられる。このような細胞による消化が事実であれば、細胞表面に結合したVLPsの一部は細胞内に取り込まれていることになり、この評価系が単に表面への結合のみならず、腸上皮細胞でのノロウイルスの内在化機構の研究や、さらに内在化を抑制する因子の探索研究にも利用できる可能性を示している。
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