・窒素動態解明のためのホスト材の物質分析 平成19年度は主として野外個体群の解析を中心に行った。枯死材の破砕への貢献が大きいと考えられるコクワガタを材料として、幼虫が穿孔している樹木の、生木、腐朽木、孔道内の破砕部分、糞、虫体等を試料として物質分析を試みた。C/N比については前述の順に低くなり、菌の蔓延による材の栄養状態の改善が示された。また、腐朽木と孔道内の破砕部分の間でもC/N比の差異がわずかに認められ、共生微生物の影響が示唆されたが、次年度以降確認する必要がある。これらの試料は安定同位体比の測定も行う予定であったが、測定依頼先の機器の関係で、本測定は平成20年度に持ち越されることになり、試料を前処理段階まで調整してある。また、近縁種間で異なるホスト材選好性を示すのではないかと考えられるルリクワガタ属の種について、各地で種ごとにホスト材を採取し、物質分析を試みた。その結果、コルリクワガタのホスト材はルリクワガタのホスト材よりもC/N比が低く、栄養改善が進んでいると考えられる他、物理的強度も低下していることが明らかになった。さらに知見の乏しいマメクワガタのホスト材の性質について野外調査を取りまとめた。 ・共生微生物検出の試み クワガタムシ科複数種において、雌後腸末端近くに微生物を保持する嚢状器官を発見し、内部に存在する生物の検討を行っている。現在、バクテリアのニトロゲナーゼ遺伝子の探索により窒素固定バクテリアの検出を試みているところである。 ・腐朽材食性穿孔虫の種同定に関する基礎的検討 近縁種の多い腐朽材食性のコブヤハズカミキリ類において、今後の種間比較に必要な正しい種同定のために交尾器形態の詳細な検討を行った。
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