研究概要 |
疲労試験機に故障がみつかり、予定していた疲労強度試験を行うことができなかった。そこで外部試験機関の協力により、無垢木材の簡単な疲労試験を行った。 一般的には材料の疲労寿命は、その荷重形態で異なることはよく知られている。反応速度論では異なる荷重形態を寿命に関連づけて、統一的に扱うことが可能である。つまり、クリープ破壊や疲労破壊の寿命を、静的破壊試験から予測することが理論的には可能となる。CaulfieldやLiuらが行った反応速度論による考察では、繰り返し荷重の波形で三角関数を用いているために、実際の解析では近似が必要となる。そこで近似を必要としない三角波や方形波を用いて、理論的に疲労寿命を予測した。その結果、反応速度論によると片振りの繰り返し曲げ試験では、三角波荷重では応力比R(σmin/σ max)によって疲労寿命に差が見られるが、方形波では応力比Rの影響をあまり受けないことが分かった。続いて反応速度論による寿命予測を検証するため、一定速度荷重(ramp荷重)の3点曲げ破壊試験を行い、反応速度論における応力係数と破壊に関与する非結合割合を算出した。実験にはヒノキの無欠点小試験体(L:100mm,R:12mm,T:12mm)を使用した。そして同材質・同形状の試験体を用いて、三角波荷重による片振りの3点曲げ疲労試験(スパン80mm)を行って得られた疲労寿命と、応力係数および非結合割合から予測される値との比較を行った。その結果、今回の実験では予測と実験結果に十分な一致を見ることができなかった。木材は試験体による物性のばらつきが大きい。本実験で用いした試験体の力学的物性を十分にそろえることができなかったのが原因と考えられる。
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