垂直軸風力発電システムを前提とした木質ブレードの疲労強度を予測するために、寿命予測式の妥当性を検討した。当初は、研究室所有の疲労試験機(Instron 8502)によって集成材の疲労試験の行い、Goodman lineなどのConstant life diagramの利用による疲労予測を検証する予定であったが、当該試験機が故障し、未だ復旧できていない状況にある。そこで実大木質材料ではなく、小試験片による実験を検討し、静的試験から疲労寿命を予測することができる速度論に基づく疲労寿命予測を検討した。既往の研究では、移動要素という概念を用い、結合・非結合の活性化エネルギーを考えることで、等荷重速度試験、クリープ試験、疲労試験を統一的に考える予測式が導かれている。従来の解析では、応力波形として三角関数を用いているため、予測式は0次のVessel関数含むものとなり近似計算が必要であった。そこで近似を必要としない三角波や矩形波の応力波形による疲労寿命予測を検討した。強度試験は小型疲労試験機(島津製作所・エアサーボ)で行った。まず静的試験からベイマツ試験体の応力係数を算出した。次いで三角波および矩形波の疲労試験を行い、得られた応力係数を使って求まる予測寿命と比較した。その結果、三角波荷重では非常によい一致をみた。しかしながら矩形波では実際の寿命は短くなった。したがって速度論に基づく予測では、一定の条件下で有効であることがわかった。垂直軸風力発電システムでは、水平軸風車にくらべてブレードにかかる応力は風向にはあまり依存せず、単純ではないが比較的安定した三角関数波(≒三角波)の繰り返し荷重がかかると思われる。この場合には速度論に基づく疲労寿命予測式は検討に値すると考えられる。なお計画では実際の風力発電システムによる検証を行う予定であったが、疲労試験機の故障と予算の不足で実行には至らなかった。
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