1) 前年度までに採集した、岩手県越喜来湾の定置網で5月に漁獲した未成熟なサケと、12月に川に溯上した成熟したサケの血液塗抹標本を精査したところ、成熟個体において雌雄ともリンパ球が減少する傾向のあることがうかがえた。好中球と栓球の割合に大きな変化は無かった。 2) 広島県栽培漁業協会で生産した海産交配系の稚アユを、太田川漁業協同組合養殖場で育成した魚を供試魚とした。5月から9月まで毎月雌雄5尾ずつをサンプリングし、測定と採血を行った。血液はヘマトクリット値(Ht値)を求めるとともに、塗抹標本を作製した。 3) 体長と体重の増加は7月以降鈍化した。生殖腺重量は9月に急増したが、肝重量に変化は認められなかった。5月から7月まで45~50%を推移したHt値は成長とともに上昇し、8月からは45%前後の値を維持した。これはHt値は成長ともに増加するというこれまでの知見と一致する。 4) メイグリュンワルドーギムザ染色を施した塗抹標本において赤血球数に対する白血球数を求めたところ、5月と6月に1~2%であった好中球とリンパ球の割合は、7月以降有意に減少し、9月にはリンパ球は約5%に、好中球は約2%になった。栓球は実験期間を通じて10~15%で推移した。これらの値を血球量(Ht値)で補正すると、好中球・リンパ球・栓球の絶対数はいずれも8月までは増加し続けるが、9月には急減することが分かった。自然免疫と獲得免疫の主体である白血球が産卵期に減少することが産卵後斃死に関わることが示唆された。
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