研究概要 |
前年度に高密度培養したS型ワムシをホシササノハベラ仔魚に与えたが、開口直後の仔魚はワムシを食べず、本種仔魚の初期餌料としてワムシは不適切であることが判明した。20年度は、初期餌料としてイワガキのトロコフォア幼生を用いた仔魚飼育を試みた。9月中旬にホシササノハベラIPメスとTPオスのから得た受精卵を50リットル水槽に投入し、酸素通気を行った止水で飼育した。開口前の孵化後2日目に餌の投入を開始した。 水産実験所周辺に自生するイワガキを採集し、卵巣と精巣をメスでカットしたのち、にじみ出てきた卵と精子を用いて人工授精を行った。イワガキは受精後約1日でトロコフォア幼生になり、活発な遊泳が認められた。30μm径のネットで集め、10,000個/50L程度のトロコフォア幼生を仔魚飼育水槽に投入した。その結果、80%以上の仔魚において摂餌が認められた。実験はイワガキの繁殖期が終わる9月下旬まで、計4回行ったが、孵化後約2週間を過ぎて生存する仔魚は認められなかった。このように、ホシササノハベラの孵化仔魚は、イワガキのトロコフォア幼生を摂餌したが、アルテミア等の次の餌料系列に入るまで、生存させることができなかったため、本研究期間において、当初の計画を達成することができなかった。しかしながら、本種の日周配偶子形成における生殖腺刺激ホルモン(GtH)の制御機構において、きわめて興味深い発見がなされた。すなわち、卵濾胞における2種GtH受容体(FSHRおよびLHR) mRNAの発現量をReal-time PCRにより調べた結果、卵黄形成前期の卵濾胞で高く発現していたfshr量は卵黄形成後期では低下した。一方、lhrの発現量は卵黄形成前期の卵濾胞では低かったが、卵黄形成後期および核移動前期で増大した後、核移動後期で急激に減少した。このように、血中に放出されている2種のGtEに同時に曝露される各種卵濾胞では、発達段階に応じたGtH受容体の発現調節によりGtHの作用が制御されていることが明らかとなった。
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