研究課題/領域番号 |
19658079
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
奥村 誠一 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (60224169)
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研究分担者 |
高橋 明義 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (10183849)
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キーワード | テロメア / エゾアワビ / 年齢 / 寿命 / サザンハイブリダイゼーション / 染色体 / プローブ / 制限酵素 |
研究概要 |
平成19年度において、本種テロメア長の測定に必要なプローブの有効性の確認およびテロメア検出用サザンハイブリダイゼーション法の確立がなされた。20年度においては、これらの結果に基づき、以下の成果が得られた。 エゾアワビのベリジャー幼生および0^+〜6^+の稚貝・成貝を用いて、幼生は全身から、稚貝・成貝については腹足筋からDNAを抽出し、制限酵素で消化後サザンハイブリダイゼーション法によりテロメア長を各年齢間で比較した。各年齢において何れもバンドはスメアーに出現した。しかしながら、これは、ヒトなどでの報告とほぼ同様なバンドパターンであり、染色体・細胞毎にテロメア長にバラツキがあるために起こる現象であった。0^+稚貝までは、ヒトの生殖細胞で報告のあるテロメア長とほぼ同様の20kb付近に強い発色が見られ、この鎖長が本種の基本となるテロメア長であることが考えられた。1^+歳以上になると、上記の20kb付近に出現するバンドはほぼ見えなくなり、泳動距離の長い方向に拡散していた。このことは、1歳程度から明確なテロメア長の短縮が見られたことを示す。1から6歳の間では、本法においては特に大きな変化は検出できなかった。以上の結果は、エゾアワビにおいても哺乳類と同様、加齢に伴いテロメア長が短縮することを示す。また、本種腹足筋におけるテロメラーゼ(テロメアを伸長させる酵素)活性の有無を定法のTRAP法により調べたところ、活性はほとんど検出されなかった。このことは、上記のように加齢と共にテロメア長が短縮した結果を裏付けるものであった。以上のように本研究は、エゾアワビにおいても哺乳類と同様、テロメアが細胞・個体の老化と深く関わることを示唆した。これらの知見は、テロメラーゼを用いた魚介類における細胞・個体の老化制御等、まったく新しい生物生産技術の開拓に繋がるものである。
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