研究概要 |
マダイvasa遺伝子のクローニングを行い,生殖腺のtotal RNAなどから2,427 bpのcDNA配列を得た。この配列には1,893bpのopen reading frame,終始コドン(TAA)および363bpの3'非翻訳領域(3'UTR)が含まれていた。cDNA配列の翻訳領域から推定したアミノ酸配列は631残基でvasaの特徴を備えており,他の生物種のvasaとも高い相同性を示したことからクローニングした遺伝子がマダイのvasa遺伝子であることが示唆された。さらに,マダイのゲノムDNAからゲノムウォーキングおよびPCR法によってクローニングされた遺伝子断片から13,547bpのゲノムDNA配列を得た。その配列には翻訳領域と翻訳領域の上流域(3,116bp)と翻訳領域下流域(188bp)が含まれていた。 上記でクローニングされたvasaプロモーターと3'UTRとの間にGFP遺伝子を連結し,その両端にtransposase認識配列を付加した発現ベクターを構築した。そのベクターをマイクロインジェクション法によってメダカtransposaseのmRNAとともにマダイ受精卵に導入し,孵化後20日目に生殖細胞におけるvasa-GFPの発現を観察して作成されたベクターが機能するかどうかを確認した結果,生殖細胞があると思われる部位にGFP様の蛍光がみられたもののマダイの自家蛍光とGFPによる蛍光との識別が困難であった。しかし導入した個体を個体識別可能な大きさまで継続飼育してIDタグ標識するとともに鰭の一部を切り取りゲノムDNAを抽出してGFP遺伝子の存在をPCR法で確認した結果,12%以上の魚のゲノムDNAからGFP遺伝子が検出され,導入した遺伝子の染色体への取り込みが確認された。
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