砂丘地における持続的・環境保全的農業の確立に資するため、砂丘地土層における降雨や灌漑に伴う降下水移動に影響する要因とそのメカニズムを検討する。本年度は、(1)土壌水分ヒステリシスが支配的な影響をもたらす、砂層表面への給水後に生じる再分布過程の水移動現象を実験的に検討するとともに、(2)乾いた砂を落下充填する際に形成されるミクロな不均一構造について、その形態と要因を実験的に検討した。 砂層における湛水浸潤後の再分布過程の水移動に関して、初期水分の影響が大きいこと(砂層が乾いている場合には、給水量がその値を超えると初めて降下水移動が生じる「臨界値」が明確であるが、砂層が湿っている場合にはそれが不明瞭になる)、また、給水によって砂層上部に保持された水は土壌水分ヒステリシスの効果により降下しにくくなることが確認された。一方、乾いた砂の落下充填に伴うミクロな不均一構造形成について、含まれる砂粒子の最大・最小粒径の比が2をこえる場合、充填過程に山あるいは斜面が形成されるとミクロな成層化が起こることが確認された。また、砂が粒径と安息角がともに異なる粒子からなっていると、斜面形成時にそれらが分離して互層が形成されることが示された。これらの結果は端緒的なものにとどまるが、今後、砂丘地の現場実態により近いと思われる、ミクロな成層など不均一構造を有する砂層を対象とした再分布過程の水移動の検討が必要なことを示している。
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