有機物を構成している分子が化学変化を起して分子の形を変えていくときに、化学変化前後の結合総エネルギー差分が光として外部に放出されることがある。これがケミルミネッセンスと呼ばれる極微弱な光である。この微弱発光現象は食用油脂の劣化度の判定などに応用されているが、ほとんどが測定波長範囲の光量を積分値として測定している。そこで、最近開発された、高感度の分光系を採用した微弱発光分光装置(日本アプライドテクノロジ社、ナノルミネッセンス・スペクトロメータMS-8310)を用い、玄米の発光の由来を調査した。 1. 2008年産玄米を用いて測定環境ガスを空気から窒素に置換したときの発光強度の変化を検討した。発光強度は品種によって異なるが、窒素に置換すると発光強度がいずれも小さくなり、玄米の発光は空気中の酸素由来のものであるということが裏付けられたと考えられる。 2. 玄米にアジ化ナトリウムと蒸留水をそれぞれ添加して発光スペクトルを測定した。アジ化ナトリウムは一重項酸素の消光剤であることから、蒸留水と比較して発光強度は減少するものと予想したが、アジ化ナトリウムのほうが発光強度は高くなった。液体にアジ化ナトリウムを添加し消光を確認したという結果はすでに報告されており、玄米・糠のような固体で反応を観測するには測定条件の検討がさらに必要だと考えられる。
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