(目的)ストレスが脳にどのような影響を与えているかを分子生物学的に検討するのが本研究の目的である。ストレス負荷動物として、ニワトリヒナの単離ストレスモデルを選択した。平成19年度は、まず単離ストレス刺激によって脳内のどこが活性化するのか免疫組織化学的に特定した。最初期遺伝子産物C-Fosは単離ストレスにより脳内で発現誘導するので、C-Fos陽性細胞をストレスの指標とした。また単離ストレスによりリン酸化されるタンパク質を分離した。ストレス反応部位ではどのような遺伝子群の転写が活性化し、また抑制されるのか網羅的に調べた。 (結果)ヒヨコ単離ストレスモデルについては、産卵鶏ジュリア雄の4日齢を使用し、群飼状態から10分間の単離飼育を行うことで作成した。単離ストレスがかかっているか否かは、10分間のDi stress Cal1の回数(800回以上)で評価した。また単離ストレスによる脳の活性化部位については単離ストレス暴露3時間で、C-FOS陽性細胞の多寡で評価した。その結果、単離ストレスにより大脳皮質が活性化することが明らかとなった。また10分間の単離ストレスにより350KDのタンパク質がリン酸化されることが明らかとなった。ストレス反応遺伝子の単離については、当初、サブトラクション法を行う予定であったが、その後、ニワトリDNAマイクロアレイが利用可能であることが判明したため、現在、単離ストレスで反応する大脳皮質遺伝子をマイクロアレイにより明らかにする準備を進めているところである。より網羅的なストレス反応遺伝子の同定が可能となることが期待される。
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