本実験の全体の手順は以下のものである。(1)1細胞G2期の胚から雄性前核を取り出し、それをあらかじめ除核しておいた卵殻胞期卵に移植する。(2)IBMXを含む培養液で減数分裂の開始を抑制しながら、数時間培養する。(3)IBMXを除いた培養液に移し、減数分裂を促す。(4)卵が第1極体を放出してMII期に到達したところで、単為発生を促す。その際、サイトカラシンを培養液に加えて、第2極体の放出を抑える。(5)その後の発生を調べる。 以上の実験手順の中で、本年度は最も問題が生じることが懸念される(4)のプロセスについての検討を行った。すなわち、第1減数分裂の際、移植された前核が正しく染色体を極体に分配するかどうかという問題である。そこで、第1分裂の後、第2分裂中期に到達した時点で染色体数をカウントし、分配が正しく行われたかどうかの確認を行ったところ、73%の卵において正常な染色体数20本が確認された。さらに、第1減数分裂によって相同染色体の分離が正常に行われているかをY染色体特異的なプローブを用いたFISH法により調べたところ、すべてのサンプルおいてY染色体は卵細胞質と第1極体に別れて存在しており、正常に染色体分配が行われていることが確認された。次に雄性前核移植卵に単為発生を促したところ、38%の卵で前核の形成が認められ、そのすべてが2細胞期まで発生した。 上のように、計画した雄性単為発生胚作出のための実験系は有効であることが確認されたが、前核形成率が38%とかなり低く、さらに実験系の改良が必要であることが示唆された。
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