研究課題
本研究の目的は、マウスネフロン形成再生機構をHepatocyte nuclear factor 4α(Hnf4α)に着目して解析し、獣医療・医療への貢献を果たすことである。本因子はプロモーター(P1、P2)の選択によりサブタイプが存在し、それぞれの組織特異性や転写効率が異なる。また、Hnf4α遺伝子の上流因子として、Hnflα/OclおよびHnflβ/Gata6がある。昨年度の研究で、成体腎臓のHnf4αはP1タイプであるが、胎子期に一過性にP2タイプが発現することを明らかにした。また、RNAiを用いた発現抑制実験により、Hnf4αが後腎間葉凝集体(CM)の分化・生存に関わることを明らかにした。今年度は、その関与を直接的に証明するためレーザーマイクロダイセクション法(LMD法)を用い、ネフロン形成過程の各部位のHnf4α遺伝子発現を解析した。C57BL/6胎齢13.5および15.5日胎子からLMD法により各パーツ(MM : 後腎間葉組織、CM、CSB : コンマ・S字体)を回収し、nested RT-PCR法により各種遺伝子発現を解析した。Hnf4α遺伝子の発現をサブタイプごとに調べた結果、P1タイプはMMでは認められず、CM・CSBと発生が進行するにつれて発現量が増加した。それに対してP2タイプはCMに一過性に発現した。また、CM領域においてはHnf1α/Ocl遺伝子の発現は認められず、Hnf1β/Gata6遺伝子の発現のみが認められた。なお、成体の腎臓では両上流因子の発現が認められた。これらの結果からHnf4α遺伝子(特にP2)はCMのステージから発現を開始することが明らかとなった。すなわち、本因子がネフロンの初期発生(間葉の上皮化)と深く関わることが強く示唆される。さらに、上流因子はHnf1β/Gata6-Hnf4α経路である可能性が高い。
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