研究概要 |
ブニヤウイルス科、オルトブニヤウイルス属のアカバネウイルス(AKAV)を用いて、ブニヤウイルスのリバース・ジェネティクスに関する手法の確立を目指した。AKAVは妊娠牛に感染した場合、胎子感染の結果、流死産や内水頭症、関節彎曲症を引き起こすことで、畜産業に大きな被害を与えるところから、研究対象とした。平成19年度は、機能的なL RNA分節をクローニングし、ミニレプリコン系を確立した(Arch. virol.,152,971-979.)。AKAVの病原性を明らかとするため、温度感受性変異株(Arch. Virol.152,1679-1686.)および野外分離株(Vet. Microbiol.,124,16-24.)の病原性、抗原性を調査し、リバース・ジェネティクスが確立した際、病原性を規定する遺伝子領域の同定を行うための基礎的データとした。この結果、ウイルスの病原性はL分節とM分節の双方に支配されていることが明らかとなった。リバース・ジェネティクスの手法検討の一つとして、まずインフルエンザウイルスで用いられているRNA polymerase I転写系について検討した。AKAVは細胞質内でのみ複製され、核の機能は関与しないとされているが、RNA polymerase I転写系を用いた場合、感染性ウイルス粒子が回収された。しかし、その効率は低かった。このリバース・ジェネティクスを用いて、S分節にコードされるNSsの欠損ウイルスを作製し、マウスの病原性を親株と比較した。その結果、NSs欠損ウイルスは弱毒化していたところから、L分節およびM分節産物とともにNSsも病原性を規定するウイルス因子の一つであることが明らかとなった(J. Gen. Virol.,88,3385-3390.)。
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