ブニヤウイルス科、オルトブニヤウイルス属のアカバネウイルス(AKAV)を用いて、ブニヤウイルスのリバース・ジェネティクスに関する手法の確立を目指した。平成20年度は、他のマイナス鎖RNAウイルスで用いられているT7-RNA polymerase転写系を試みた。この結果、効率良く感染性ウイルスが回収出来た。AKAV野外分離株には、妊娠時胎子にのみ病変を形成する株(OBE-1株)と生後感染の結果脳炎を引き起こす株(Iriki株)の存在が知られている。このため、昨年作製したOBE-1株 cDNAと同様の手法を用い、Iriki株3分節cDNAを作製し、T7 RNA polymerase転写系を用いたリバース・ジェネティクスによるウイルス回収を試みた。OBF-1株と同様、Iriki株でも効率良く感染性ウイルスが回収出来た。両株の各分節cDNAを組み合わせることで、分節キメラウイルスである遺伝子再集合ウイルスを作出することに成功した。AKAVは3本のRNA分節よりなるため、理論的には親株の組み合わせも含め8種類の遺伝子再集合ウイルス作製が可能であり、現在全ての組み合わせを作出するため試験を行っている。この手法を使えば、インフルエンザウイルスで行われている遺伝子組換え型ワクチン用ウイルス作出が可能となることから、特許出願のためデータの整備を行っている。また、平成19年度に作出したOBE-1株NSs欠損ウイルスのマウス病原性低下原因を解析するため、欠損ウイルス感染細胞におけるインターフェロン誘導遺伝子群の発現状況を検討したところ、検討した因子(Mx1、XAF-1、OAS-1、viperin)の発現上昇がみられ、NSsがタイプIインターフェロンの抑制に関わっていることが確認された。
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