本研究は、植物ベクターを用いて効率的にワクナン抗原を可食植物に産生きせ、家畜動物に粘膜免疫を行うというものである。当初の研究計画では、タバコモザイクウイルスの効率的感染方法として、葉にカーボランダムをふりかけてウイルス液を塗布する方法を予定していたが、平成19年6月1日に行われた新生木原生物学研究所記念シンポジウムにおいて、吸引法(ウイルス液に植物を浸して陰圧にすることで、より効率的に感染させることができる)が紹介された。本法により、タバコおよびタバコよりウイルス組織伝播効率の低いナス科植物への組換え蛋白の産生効率が飛躍的に向上することが期待でき、本研究の目指すところである、植物におけるワクチン抗原の効率的産生のために必要な技術である。よって、組換えウイルスを作出することより、本吸引法の感染システムの確立のための研究を優先し、平成19年6月より吸引法を用いて感染実験を行った。感染系の確立に8ヶ月を要したため、平成19年度予算を用い、平成20年度に、平成19年度に予定していた、組換えタバコモザイクウイルスの作出を行った。ブタ回虫感染防御抗原であるAs16の遺伝子を、植物用に最適化したものを用い、ゲートウェイ法により、pTogJベクターに組み込んだ。けじめに、シグナルペプチドを付加したものと、付加しないものをデザインしたが、シグナルペプチドを付加した遺伝子のみがベクターに組み込まれたため、それを用いて、組換えウイルスを作成した。改変As16遺伝子を導入したpTogJベクターを、in vitroで転写し、カーボランダム法により、Nicotiana tabacuin cv.Xanthi ncの葉に塗布した。組換えタバコモザイクウイルスの生成が、プラークの出現により、確認された。
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