沖縄島において、日本脳炎ウイルス(JEV)の抗原性と遺伝子型が変化したことを発表した.この事は外来性JEVが沖縄島に侵入、拡大した事を示している.世界的分布域拡大に渡り鳥の関与が示唆されている.外来性フラビウイルスの侵入経路および増殖の機序を解明する事を目的に、野生動物救護認定病院および救護施設と協力し、沖縄の傷病鳥獣からのウイルス分離と血清学的検討を行った.また、対象として、JEVの活動がほどんどないと知られる北海道の渡り鳥に関しても同様の検討を加えた. (1)沖縄傷病鳥獣で血清38検体、血餅17検体、死体36検体が採取、運搬された.血餅および死体の臓器、血清からウイルス分離を試みたが、ウイルスは分離できなかった. (2)血清(生体)及び体腔液(死体)59検体中39検体がJEVNakayama株に対し中和抗体を有していた.陰性20検体は留鳥か冬鳥であった。 (3)北海道で捕獲した野生カモ類92血清中にフラビウイルスに対する非常に高い中和抗体陽性率が見られた.夏鳥はJEVに対し高い抗体陽性率、抗体価を有していた.冬鳥はJEVよりもWNVにたいした高い抗体陽性率、抗体価を有していた.冬鳥留鳥夏鳥のいずれかはその中間であった. これらの結果から、いずれかの地でフラビウイルスに感染した鳥が沖縄島および北海道に渡っている事が明らかになった.既知のJEV及びWNVの分布域及び渡り鳥の渡りの経路をふまえ、これらの結果を解釈すると、渡り鳥がフラビウイルスの運びに何らかの関与をしている事が示唆される。現在、これらの結果を踏まえ、獣医師らと沖縄県での危機管理(WNV侵入を含む)に対する話し合い準備を行っている
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