研究課題
沖縄島において、日本脳炎ウイルス(JEV)の抗原性と遺伝子型が変化した。この事は外来性JEVが沖縄島に侵入、分布域を拡大した事を示している。鳥がJEVの増幅動物である事は知られているが、分布域拡大機序に関与しているかどうかは解明されていないため、鳥の役割を明らかにするため本研究を行った。(1)平成19-20年度にかけて、52血清及び84死体(21から体腔液採取)が採取、保護された。(2)84死体の臓器と、52血清を蚊細胞C6/36に接種し、ウイルス分離を試みたが、JEVは分離出来なかった(3)73血清及び体腔液中の抗体保有率を50%フォーカス減少法にてJEVと西ナイルウイルス(WNV)を用いて調査した。58.9%がJEVに対し、21.9%がWNVに対し抗体を有していた。旅鳥(n=2)では100%、50%、夏鳥(8)では75%、25%、冬鳥(26)では57.7%、23.1%、留鳥(37)では54.1%、18.9%が各々JEVとWNVに対し抗体を保有していた。(4)対象として、JEVの活動が低いことが知られている北海道で捕獲された92羽野生カモ中の抗体保有率を同様に調査したところ、85.9%がJEVに対し、66.3%がWNVに対し抗体陽性を示した。夏鳥のカルガモ(n=20)の100%、70%、冬鳥のオナガガモ(16)の81.3%、81.3%、冬鳥ヒドリガモ(5)の33.3%,83.3%、季節性が不明なマガモ(50)の88.0%と58.0%が各々JEVとWNVに対し抗体を保有していた。以上の結果より、北海道のカモに非常に高いフラビウイルス抗体陽性率が見られ、また、冬鳥のカモでは高いWNV抗体保有率と抗体価が見られた。WNVの分布域は極東ロシアに広がっている報告からも、これら鳥は過去にシベリアでWNVに暴露した事が示唆された.一方、JEV活動が活発である沖縄ではJEVの抗体保有率は高かったが、WNV抗体保有率は有意に低く、中和反応性に違いが見られた。北海道のカモの調査結果が、非特異的反応によるものではない事を支持した.北海道がWNVに感染した鳥の渡り経路である可能性が高い為、今後疫学調査の継続し、リスク評価を強化する必要性を強く示した.
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
Vector-Borne and Zoonotic Diseases (In press)
Journal of Veterinary Epidemiology 12
ページ: 25-26