研究概要 |
我々は,市販の好熱菌発酵産物(開発元:三六九)を堆肥のモデル系として用いて,土壌への添加によって植物体内の硝酸態窒素含量が低下することを見いだした(2007年、日本農芸化学会にて発表)。硝酸態窒素は日本ではWHOの定める基準値を超えて摂取していることから,野菜の硝酸態窒素含量を低減させることが求められている。本研究では好熱菌発酵産物が硝酸態窒素含量を低減させる分子機構について研究を進めた。特に植物体内の窒素代謝に関わる反応系の中で,硝酸から亜硝酸への反応を触媒する硝酸還元酵素に注目して,当該発酵産物の影響を解析した。アラビドプシスを実験植物として検討した結果,当該発酵産物を添加した試験区では,植物体内の硝酸態窒素含量の低減に伴って,硝酸還元酵素の活性も対照区に比べ減少するという相関性が得られた。また,対照区では光強度が増加するにつれて硝酸還元酵素の活性が増加したが,発酵産物を加えた試験区では,光強度を変化させても,硝酸還元酵素の活性がほとんど変化しなかった。硝酸態窒素含量が低い状態では,それに伴って硝酸還元酵素活性も低い状態となっており,今後,硝酸の吸収の段階での調節機構について調べる必要があると思われる。また,植物ではC/Nバランスを維持するため,光合成活性の増大に伴い硝酸還元酵素活性も増加すると考えられているが,有機肥料存在下ではそれとは異なる制御機構によりC/Nバランスが維持されていることが示唆された。これらの結果については2008年、日本農芸化学会にて発表した。
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