研究概要 |
本研究では、円筒型フォトバイオリオアクター(高さ2m、直径15cm)を微細藻Dunaliella salina(D.salina)の培養に適用するとともに、D.salinaの増殖に影響を与える環境因子の特定を試みた。培養液は、RO膜で約5%に濃縮した海洋深層水にNaClと栄養塩を添加したものを用いた。NaCl濃度は11.9%とした。D.salinaを異なる環境条件下(温度、照度、培養容器)にて培養し、細胞数、およびβ-カロテン含量を経時的に測定した。2007年5月-6月にリアクターによるD.salinaの培養を行ったところ、培養25日目の細胞数は3.1×10^5 cells/mLと過去に得られた細胞数と比較して低かった。培養期間中のリアクター内の平均水温は36℃であったことから、この高温条件がD.salinaの増殖に影響を及ぼした可能性が高いと考えられた。そこで、フラスコ内においてD.salinaの増殖に対する培養温度(15℃、20℃、25℃、30℃、35℃)の影響を調べたところ、最も低温の15℃において最大の細胞数(15.0×10^5cells/mL)が認められた。その一方で、リアクターの平均水温に最も近い35℃における培養では、5.1×10^5cells/mLの細胞数しか得られなかった。また、β-カロテン含量も15℃で最も高い値(14.6μg/mL)が認められた。次に、フラスコ内においてD.salinaの増殖に対する培養照度(15,400Lux、19,300Lux)の影響を調べたところ、細胞数、およびβ-カロテン含量に差違は認められなかった。以上の結果から、照度と比較して温度がより重要な環境要因であり、低温環境におけるリアクターでの培養がD.salinaの生産性向上につながると考えられた。
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