本年度は、生物試料として好熱性シアノバクテリアであるThermosynechococcus elongates BP-1を用いた実験を行なった。膜担体素材の選定実験では、担体としての入手のし易さやコストを含めて検討した結果、担体素材としては、アルミナ・シリカ系セラミックファイバーの利用について重点的に検討を行なった。グロース・チャンバー内に静置したペトリディッシュを用いた実験の結果、T.elongatusを5mm厚セラミックペーパーを膜担体とした固相系で増殖させることに成功した。また、フォトバイオリアクター筐体については、その設計及び開発を行なった。とくにフォトバイオリアクターにて培養液の供給系として用いる超音波霧化装置の利用を含め、要素技術に関する検討を中心として行なった。但し、超音波霧化装置を利用した湿度環境の調節システムでは、内部の光量が低下することから、今後、改良が必要である。 なお、好熱性シアノバクテリアのインキュベーションに関しては、既存の環境制御システムを改造し、固相系に於いても、40℃での好熱性シアノバクテリア菌種株の継続的な維持が可能な様なシステムを構築した。当該システムは、インターネット経由でリモートで環壇条件を設定できるシステムであり、これにより培養中の環境データに関してもネットワーク上でのモニタリングならびにデータの記録が可能となった。 以上の結果、今後の膜培養に必要な基礎的な知見を得ると同時に、今後の課題についても明らかにすることが出来た。
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