本年度の研究では、昨年度の研究により得られた成果より、特にアルミナ・シリカ系セラミックファイバーの膜担体素材としての利用について重点的に検討を行なった。グロース・チャンバー内に静置したペトリディッシュを用いて、当該膜担体を用いて、長期実験を実施した。その結果、好熱性のシアノバクテリアであるThermosynechococcus elongates BP-1を5mm厚セラミックペーパーを膜担体とした固相系において、適宜培養液を補給することにより、長期間(365日以上)に渡って好熱性シアノバクテリアを継続的に培養できることを明らかにした。これは必ず継体培養の作業が必要となる、液相のみの培養システムや、やはり乾燥により水分が失われるゲランガム培地等による培養システムとは大きな違いであり、メリットとなるものである。また、フォトバイオリアクター筐体については、その要素技術に関する検討を更に進めた。とくに本年度はフォトバイオリアクターにおけるセンシング系についての検討を行なった。なお、好熱性シアノバクテリアのインキュベーションに関しては、昨年度より運用を始めた環境制御システムを用いて、固相系に於いても、40℃以上での好熱性シアノバクテリア菌種株の継続的な維持が可能な様なシステムを本年度も継続的に運用した。当該システムは、インターネット経由でリモートで環境条件を設定できるシステムであり、これにより培養中の環境データに関してもネットワーク上でのモニタリングならびにデータの記録が可能なものである。以上の研究で得られた結果より、今後の膜培養に必要な基礎的な知見を得ると同時に、今後の課題についても明らかにすることが出来た。
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