研究概要 |
光グラフト重合法を用いてシート状のポリプロピレンの表面にアクリル酸を重合させ,カルボキシル基を持つ高分子シートを作成した。高分子シート上のカルボキシル基にニトロキシラジカル酸化剤である4-ヒドロキシTEMPOを縮合させ,高分子固定化触媒を創製した。それを用い塩化メチレン中ヨードベンゼンジアセタート存在下でp-ニトロベンジルアルコールと一晩反応させると,対応するアルデヒドが定量的に得られた。高分子シート固定化触媒をピンセットで取り出し,水およびメタノール,アセトンで表面を洗浄し,減圧乾燥させたところ,その重量にほとんど変化がなかった。このものを再び同じ条件下でp-ニトロベンジルアルコールの酸化に用いた。同じ反応を8回繰り返したが,1回目とほぼ同様の結果が得られた。この間,固定化触媒の重量等の変化は見られなかった。 一方,超原子価ヨウ素化合物のポリプロピレンへの固定化については,基になる触媒反応の効率を向上させる必要があった。そこで,p-アルコキシフェノールのp-キノンへの反応において,溶媒効果を検討したところ,約100倍の反応効率の増大が見られた。すなわち,0.05当量の4-ヨードフェノキシ酢酸を4当量のオキソン存在下,2,2,2-トリフルオロエタノール-水中でp-アルコキシフェノールと反応させると,わずか1時間で対応するp-キノンがほぼ定量的に得られた。また,p-アリールフェノールのp-キノールへの酸化反応やp-ジアルコキシベンゼン類のp-キノン類への酸化反応でも,高い触媒効率を達成することができた。 さらに,光グラフト重合法を用いて創製したポリプロピレン-アクリル酸重合ポリマーシートの表面にp-ヨードベンジルアルコールを縮合させることに成功した。
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