本研究は、105歳以上の超百寿者について、老化に伴うタンパク質の発現変化とその機構について網羅的に解析し、老化マーカーあるいは健康長寿マーカーの策定を測ることを目的としている。本年度は、超百寿者群及び対照群の血液より分離した血漿サンプルを用いて、タンパク質の二次元電気泳動による分離を行った。まず、血漿をアセトン沈殿により脱塩した後、1次元目は等電点電気泳動、2次元目はSDS-PAGEを行い、二次元電気泳動により血漿中のタンパク質を分離した。SYPRO Rubyを用いてタンパク質を染色し、ディファレンシャルディスプレイによる超百寿者群と対照群の比較を行い、超百寿者群において発現の変化するタンパク質スポットを探索した。その結果、18のタンパク質スポットが変化することが明らかになった。これらのタンパク質を、ペプチドマスフィンガープリンティングを用いて同定したところ、超百寿者で増加するタンパク質の一つがハプトグロビンβ鎖であることが明らかになった。そこで、ハプトグロビンの長寿マーカーとしての可能性について検討するため、特異的抗体を用いたELISA法により、若齢対照群(20〜30代)、老齢対照群(70〜80代)と超百寿者群(105〜)のハプトグロビンの比較を行った。その結果、若齢対照群ではハプトグロビン含量は低く、老齢対照群では増加していることが明らかになった。血漿中のハプトグロビンは加齢により増加する、いわゆる老化マーカーとしての可能性が示唆された。また、老化の環境因子のひとつと考えられる酸化ストレスと長寿の関係を調べるため、酸化ストレスマーカーの検出を試みた。タンパク質の酸化的障害の指標であるカルボニル化タンパク質について定量したところ、超百寿者における有意な変動は認められなかった。今後、抗酸化能などについても検討を行い、健康長寿マーカーの策定につなげたい。
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