リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸は、細胞膜構造の維持、プロスタグランジンやロイコトリエン合成に必要な不飽和脂肪酸である。近年プロスタグランジン類を含め、不飽和脂肪酸類が種々の核内受容体に結合し、その機能を制御していることが明らかになってきた。しかしながら、これら脂肪酸類の核内受容体親和性は非常に弱く、実際の生理機能における役割はほとんどわかっていない。本研究では、核内受容体親和性および特異性の高い内因性リガンド(天然型不飽和脂肪酸)の探索および、これらの脂肪酸をリード化合物としたリガンド構造展開を行う。本年度は、上記不飽和脂肪酸のcis型二重結合の生物学的価性基として芳香属アミドやスルホンアミドもしくはN-アシルピロリジンやN-アシルピペリジンを母核とする化合物を創製した。これらの化合物はヒト白血病細胞HL-60に対しては増殖抑制、分化誘導などの活性はもたず、RARやRXRを介した機能はないと考えられる。一方、脂質代謝を制御している核内受容体LXRに対する機能をルシフェラーゼアッセイにて評価したところ、幾つかの化合物がLXRαに対してアゴニスト活性を有することがわかった。また、LXRβに対しては活性を持たないことから、有る程度のサブタイプ選択性を有していると考えられる。以上の成果を元に、より構造展開することにより、ユニークな仮性プロファイルを持つ新規核内受容体リガンドの創製が可能である。
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