リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸は、細胞膜構造の維持、プロスタグランジンやロイコトリエン合成に必要な不飽和脂肪酸である。近年プロスタグランジン類を含め、不飽和脂肪酸類が種々の核内受容体に結合し、その機能を制御していることが明らかになってきた。しかし、これら脂肪酸類の核内受容体親和性は非常に弱く、実際の生理機能における役割はほとんどわかっていない。本研究では、これらの脂肪酸をリード化合物としたリガンド構造展開を行った。前年度に、不飽和脂肪酸誘導体としてアミド、スルフォンアミドなどを導入した化合物にLXRαアゴニスト活性を見いだした。本年度は、天然物であるRiccardin CがLXRα選択的アゴニストであることに着目し、Ric cardin Cの構造とアミド、スルフォンアミド誘導体とのハイブリッド構造を有する環状および非環状誘導体を設計、合成した。その結果、幾つかの化合物にRiccardin Cに匹敵するLXRαアゴニスト活性を見いだした。さらに、アミド、スルフォンアミドよりも自由度の高い結合を導入した誘導体も合成したところ、高濃度では毒性がみられたものの、Riccardin Cよりも強力なLXRαアゴニスト活性を持つ化合物をみいだした。これらcis型二重結合の生物学的等価性基を有する誘導体とRiccardin Cのハイブリッド化合物を用いたオーファン受容体機能制御活性については、現在検討中である。 また、ホウ素クラスターであるカルボランのcis型二重結合等価性を検討すべく、種々のカルボラン誘導体を合成した。これらの生物活性についても現在、詳細に検討している。
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