1.細胞選択的膜透過ペプチドの細胞膜受容体の同定:ファージディスプレイ法で見いだした白血病細胞選択的結合ペプチドLCTP1(Cys-Ala-Tyr-His-Arg-Leu-Arg-Arg-Cys)の受容体分子の同定を、ペプチドアフィニティカラムにより行った。急性白血病細胞株Molt-4の可溶化抽出液からいくつかの候補タンパク質分子Lancl-1を得た。これに対するペプチド抗体を作製し、その細胞局在を調べた結果、細胞内分子であった。よって、目的とする膜受容体を光ラベル法で解析することを計画している。 2.ペプチドの細胞膜透過経路の分子機序解析:LCTP1の蛍光標識体をペプチド自動合成し、フローサイトメトメーターと各種エンドサイトーシス阻害剤を用いて、細胞内取り込み経路を解析した。その結果、ワルトマニンやアミロライドで取り込みが阻害されたことから、本ペプチドはマクロピノサイトーシス経路で取り込まれることが明らかとなった。また、同じマクロピノサイトーシス経路で取り込まれるHIV-1 Tatペプチドとは、細胞膜上の受容体が異なることを明らかにした。 3.LCTP1-Notch1キメラペプチドの合成:Notch1の部分配列をLCTP1ペプチドと連結させた機能的ハイブリッドペプチドを合成した。白血病細胞株CCRF-CEMやJurkat-Tを用いて、細胞傷害活性を指輝に細胞への影響を調べた結果、著明な細胞死を誘導することがわかった。また、この細胞死はアポトーシスと異なるという興味深い知見を得た。
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