肺がんはがんによる死亡の主要な原因であり、早期発見が行われても転移性肺がん患者の予後は一般的に不良である。現在まで、がん転移の分子機序の解明において、がんの血行性転移に関しては学際的に多大な努力が費やされてきた。 しかしながら、種々の腫瘍患者の予後を規定する要因であるリンパ節転移のメカニズムについては未だ詳細は明らかとなっていない。 これまでに、我々は、温度感受性SV-40 Transgenicラットから、リンパ管内皮細胞を単離し、33℃において培養することで、安定したリンパ管内皮細胞株の樹立し、さらに特殊なゲル上で培養することで、生体内でのリンパ管網を模倣する管腔ネットワークを新生することも確認でき、この現象を利用して、in vitroリンパ管新生評価系を開発した。 今回、この評価系を用いて、リンパ管特異的に発現している遺伝子をgene chipを使用して探索した。その結果、血管内皮細胞増殖因子受容体であるVEGFR-2の発現が顕著に亢進していた。また、Western Blotting解析によりタンパク質のレベルにおいても、この発現亢進が確認できた。 現在、VEFGR-2に対する抗体を作成中である。 今後は、リンパ節への肺癌の転移抑制効果を検討するために、VEFGR-2抗体一抗癌剤複合体、並びにVEGF-C、VEGF-Dの中和抗体の治療効果に関して肺がん同所性移植病態モデル動物を用いて評価する予定である。
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