近年、HIV-1Tatタンパク由来のペプチドTat-(48-60)やオリゴアルギニンなどの塩基性ペプチドを薬物の分子構造に結合させ、塩基性ペプチドで修飾することにより、各種細胞内にこれら薬物を導入できることが報告されてきており注目を集めている。そこで本研究では、生理活性ペプチドのモデルとしてカルシトニン(CT)を選択し、CTにアルギニン残基を結合させたオリゴアルギニン修飾カルシトニンを合成し、その経粘膜吸収性が元の化合物に比べ高くなるか否かを in situ 消化管、経肺ならびに経鼻吸収実験系により評価した。本研究ではCTにオリゴアルギニン8個(R_8)を結合させたR_8CTを合成した。R_8-CT合成後の残存薬理活性を静脈内投与後の血漿中Ca^<2+>低下作用を指標として検討した。その結果、R_8-CTは、約90%の薬理活性を保持していることが示された。次にR_8-CT静脈内投与および各経路における投与6時間までの血漿中カルシウム濃度-時間曲線から面積減少率を求め、さらに薬理学的な利用率を求めた。その結果、小腸、大腸ならびに肺におけるR_8-CTの血漿カルシウム低下作用は、未修飾体のCTに比べ、それぞれ2倍、14倍ならびに1.5倍増大することが認められたが、経鼻吸収ではほとんど効果はみられなかった。 以上のことから、オリゴアルギニン修飾がカルシトニンの消化管をはじめとする経粘膜吸収改善に有用な方法である可能性が示唆されたが、その促進効果は用いる吸収部位などに左右されることが明らかとなった。
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