平成19年度の本研究で、以下のところまで研究の進捗があった。 霊長類において精巣由来幹細胞を樹立することが目標であるが、霊長類の精巣が得られる機会は少なく、より入手容易な、かつ、比較的大型な動物を用いて、種を超えて応用可能な培養条件を作ることとした。また、樹立経過で、得られた細胞株が幹細胞株なのか否かの検証には、異種精細管移植法を確立しておくことが必須であるため、この実験を先行させた。 (1)異種移植系の確立に向けての研究: NOGマウスを用いた移植系としては、全身にGFPを発現するウサギ由来精巣をNOGマウス精巣に精細管移植したところ、3ケ月後には、GFP陽性のSpermatogonia(抗GFP抗体陽性)が、コントロールのヌードマウスに比較して高率に精細管に認められた。しかし、それ以上の分化像は認められなかった。 (2)GS細胞樹立に向けた、大型動物からの精原細胞の濃縮法の確立; これまでのげっ歯類を用いた研究により、精巣由来幹細胞株の樹立には、非精原細胞分画をいかに効率よく取り除くかが鍵であるとの感触を得ている。そこで、平成19年度は蛍光励起細胞分集装置を用いて、細胞の大きさや、細胞内構造の複雑さなどの指標を用い解析を行い、一部の分画に精原細胞が濃縮されている可能性が高いという点まで明らかとなった。今後、精巣内体細胞分画を、体細胞分画を構成している細胞に発現している分子に対する抗体で取り除き濃縮率を上昇させるとともに、遺伝子発現を比較して、分画化された細胞について純度を検討したい。
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