【研究計画の背景】我々はある株化ストローマ細胞と骨髄由来活性化樹状細胞(BMDC)を合わせて、コラーゲンスポンジを足場としてマウスの腎皮膜下に導入することによって人工的(組織工学的に)リンパ組織を構築する方法を確立し、また、ストローマ細胞がこの人工リンパ組織構築に重要な役割を果たしている事を明らかにした。 【研究目的】人工リンパ組織が効率のよい獲得免疫機能を有することに注目して免疫賦活装置として臨床に応用することを目指している。そのためには構築方法を単純化し、ストローマ細胞を用いない新しい人工シンパ組織構築法を開発する必要があると考えて本研究課題を計画するに至った。 【方法】特殊な高分子マトリクスにリコンビナントサイトカインを吸着させてBMDCと合わせ、コラーゲンスポンジを足場としてマウスの腎皮膜下に導入して数週間後に二次リンパ組織に類似した組織構造が構築されるかどうかをT、Bリンパ球の集積程度を組織学的に解析することにより検討した。 【結果と考察】マトリクス2種類に6種類のリコンビナントサイトカインをそれぞれ様々な組み合わせで量を変えて吸着させ、マウスの腎皮膜下に導入してリンパ球の集積量を検討した。その結果、ストローマ細胞を用いて構築した人工シンパ組織に比べれば程度は劣るものの、リンパ球の集積が観察され(1)リンパ球集積に適したマトリクスとサイトカインの組み合わせがあること、(2)組み合わせだけでなく、適量のサイトカインを吸着させることが重要であること、が分かった。これらの結果から「非細胞型ストローマ細胞代替マトリクス」を用いた人工リンパ組織構築は可能であると考えている。
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