VAMP-pHluorin(シナプトフルオリン)は、pH感受性GFP改変タンパク質であるpHluorinを、シナプス小胞膜タンパク質であるVAMP-2(Synaptobrevin-2)のC末端側に融合させたものである。シナプス小胞内腔のpHは、エキソサイトーシス、エンドサイトーシスなどの過程で酸性(pH 5.6)→中性→酸性に変化する。VAMP-pHluorinの蛍光変化により、小胞ダイナミクスをリアルタイムに可視化するのが、シナプトフルオリン法である。従来の方法に比べ、シナプトフルオリン法によるエキソサイトーシス計測は高い感度を有しているといえる。しかし、(1)神経活動の際、内因性物質であるフラボンタンパク質(FAD)などに由来する自家蛍光がVAMP-pHluorinのS/Nを低下させる、(2)酸性環境におけるpHluorinの蛍光が微弱であり、VAMP-pHluorinを発現している終末を非活動時に形態的に同定するのが難しい、といった問題点が残されていた。造礁サンゴのDiscosoma種由来の蛍光タンパク質DsRedの改変体モノマーのひとつmOrangeは、pHluorinよりも長波長側に励起蛍光波長を持つ。本研究では、mOrangeのpH感受性を蛍光分光光度計で計測し、pKaを求めた。得られたpKaは7.1であり、mOrangeを用いることにより、S/Nが改良される可能性が示唆された。さらに、黄色蛍光タンパク質EYFPをドナー、mOrangeをアクセプターとするFRETによるレシオ型pHセンサーの作成を試みた。しかし、期待通りのFRETを得るには、リンカー部分の改善がさらに必要である。しかしVAMP-mOrange単独であっても、S/Nに改善が期待されるので、これを検証する目的で、VAMP-mOrangeをゲノムに導入したPC12細胞のin vivoの分泌システムを構築した。
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