我々は、P2X2チャネルが、明確な膜電位センサー部位を持たないにも関わらず、ATP濃度と膜電位の両方に依存するゲーティングを示すことを見いだした。その由来として、C-C(ATP)-O(ATP)という3ステートモデルを用いて表現すると「前半のATPの結合ステップが膜電位依存性を有する。」、「後半のATPの結合以降の開口に至るステップが膜電位依存性を有する。」という2つの可能性が考えられる。この二つの可能性を検証するために、以下の実験を行った。(1)シミュレーション解析。観察された膜電位依存的ゲーティングが、同時にATP濃度にも依存するため、3ステートモデルにおいては、前半の速度定数に膜電位依存性があると直観的には予想される。 しかし、リガンド結合の速度定数は相対的に非常に大きく、結合以降のステップが律速段階となっているためか、シミュレーションの結果からは、むしろ、後半の速度定数に膜電位依存性を導入した方が、現象によく合致することが明らかになった。(2)ATP結合部位を構成している部位の変異体K69RおよびK308Rの機能解析。K69Rの膜電位-コンダクタンス関係はATP濃度依存性を示したが、活性化時定数は、ATP濃度依存性を示さなかった。K308R変異体の膜電位-コンダクタンス関係、および活性化時定数は、共にATP濃度依存性を示さなかった。この結果からは、膜電位依存性のゲート機構にATP結合部位が関与していることが示唆された。(1)(2)より、ATPが結合した結合部位の構造変化が膜電位依存性の源である可能性が示唆された。
|